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「薔薇物語」公演について

<公演について>

"恋愛は12世紀の発明だ"と言われています。これは、この時期西洋において新しい恋愛観と様式が生まれたことを示しています。私はこれまで中世ルネサンスの愛の歌シャンソンを歌ってきましたが、これらの詩の発想はどんな観念から生まれたのかを知りたくなり、『薔薇物語』に出逢いました。
ここに愛の神の掟など宮廷風恋愛についての観念を読み取ることができるだけでなく、有難いことに篠田勝英氏等の生き生きとした日本語翻訳によって、現代の私達も十分楽しめる寓意文学として興味深く読むことができました。そこで、当時の文学の楽しみ方である朗読会の形でその一部を、その頃の名曲と共に皆さんにご紹介してみたいと思いました。二人のギョーム、マショーとデュファイなどの作曲家達もこのお話しを熟知しており、直接この"薔薇"を歌った作品すら存在します。
日本では珍しい、美しい薔薇の庭園のあるこの洋館で、ヨーロッパ中世の夢の一コマを楽しんで頂けたら幸いです。

花井尚美


<薔薇物語について>

12・13世紀頃のフランスにおける「恋愛」は、現代の「恋愛」と、どう違うのか。恋愛、詩作、そして音楽を分けて考えることをしない、というところが大きな違いではないだろうかと思います。恋愛するときに生じる様々な葛藤や矛盾なくしては、良い詩や曲を作ることはできない・・・。この考えを凝縮させたのが『薔薇物語』です。2万行を超えるこの詩は、実は一人ではなく、二人の詩人によって書かれたもので、第1部は13世紀初頭にギヨーム・ド・ロリス(Guillaume de Lorris)、第2部は13世紀末にジャン・ド・マン(Jean de Meun)がそれぞれ筆をとり、それぞれ恋愛について個性的な文章を残しました。
今回の演奏会では、中世フランスの気品溢れる「宮廷風恋愛」を理解する上で最も重要な第1部を取り上げることにしましたが、話を簡単に要約しますと、主人公の「私」が、20歳のときに見た夢を5年以上経ってから作品に歌い上げる、というものです。その夢の中に出てくる薔薇は「ある女性」を表し、主人公はその女性との叶わぬ恋に身を焦がすことになります。さらに<閑暇>、<歓待>、<拒絶>などといったアレゴリー(擬人化された概念)たちが主人公と彼の愛する薔薇との対面を手伝ったり阻止したりします。
この一風変わった物語は、読者自らが体験したことのある恋の悩みを取り上げ、それを解決するための知恵を、面白い物語を通じて学べる、恋愛教本とも言えます。当時の証言によれば、このような作品を宮廷で読む場合、朗読を担当する人が声に出し、音楽の演奏を挟むなどして、陽気でありながら、格調高い朗読会が行われていたようです。
13世紀から16世紀にかけて広く読まれた『薔薇物語』は、その独特な愛と詩に関する考察が人気を博して、ルネサンス以降もヨーロッパの人々の意識の中に潜在的なものとして存在し続け、さらには現代のフランス文化・文学へも影響を与えた、フランス中世文学を代表する作品となっています。

佐藤ヴェスィエール吾郎


Roman de la Rose BL Harley MS4425


11月6日「薔薇物語」公演概要

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